お問い合わせお問い合わせ

お知らせ

2022.10.24 「2022えなローカル起業カレッジ」第2回開催レポート

2022年9月19日(日)、「2022えなローカル起業カレッジ」第2回が開講されました。

第2回の講師は、中野方のお隣・八百津町で服のデザインから生産、販売まで手がける「てとてびと商店」の末近さやかさん。「小さな循環をつくり出す」をテーマに、講義とワークショップを行っていただきました。

今回の会場は「望郷の森キャンプ場」の予定でしたが、台風接近の予報のため第1回目と同じ「坂折棚田なごみの家」での開催となりました。受講生6名は全員が第1回目からの継続受講で、終始和やかな雰囲気の中、質疑やシェアもより活発に行われていました。

今回も、中野方に移住2年目の運営スタッフ・中畑がレポートをお届けします。第1回目に引き続き、田舎での「なりわい」づくりについて考える一助となれば幸いです。

 

世界中から人々が集まり、楽しめる「望郷の森」へ

第2回の前半は、中野方を見下ろす笠置山山頂近くにある「望郷の森キャンプ場」を運営する平林悠基さんがスピーカーを務めました。

自然を堪能できる素晴らしい立地にありながら、かつてはすっかり寂れてしまっていた望郷の森キャンプ場。中野方へ移住した平林さんは、地元の方々の理解と協力を得ながら地道にキャンプ場の整備を進めました。さらに、全国各地の建築家やクリエイティブデザイナーといった個性的な仲間とともに、センターハウスのリデザインや各種イベントなどさまざまな施策を手がけ、望郷の森の良さを生かした魅力的なキャンプ場へと生まれ変わらせたのです。今では「知る人ぞ知る」隠れた人気のキャンプ場として、口コミで人が集まるようになってきています。

そんな平林さんのビジョンは、キャンプ場の枠を超えたずっと先にあります。教員そして教育系ITベンチャーでの経験や、転機となった東ティモールのスタディツアーを通して、「子どもたち一人ひとりの創造性を育む場をつくりたい」という強い想いを抱くようになりました。学校や教育の枠を超え、世界中から人が集まり、自然の中で誰もが生き生きと楽しく過ごせる「育ちの場」を。大きなビジョンを見据えながら、平林さんの挑戦はまだまだ続きます。

平林さんのお話に触発され、受講生の方々からは数多くの質問や感想が飛び出しました。その中から、「ローカル起業」の参考になる質疑応答を少しだけピックアップしてご紹介します。

-------------------------

Q:中野方は、起業など新しいことに挑戦しやすい場所だと思うか?

A:そう思う。移住当時まだ20代の若造だった僕の話を、多くの地元の方々が親身になって聞いてくれ、協力してくれた。相談や関係づくりなど、自分からの働きかけはとても重要。自身も、最初は地元の子どもたち向けのサマーキャンプのような小さな取り組みから始め、理解をいただきながら少しずつ活動を広げていった。

 

Q:活動する上で、株式会社という形態を選んだ理由は?

A:まず、仲間を巻き込み社会にインパクトを起こしていくには個人ではなく会社の形が必要だと考えた。ビジョン実現には大きな資金が必要となるので、会社の中でも融資に有利で、資金を集めやすい株式会社を選択。個人事業主、NPO、社団法人など、それぞれにメリット・デメリットがある。自分に合うスタイルを選ぶのが重要。

昼食は、「なかのほう不動滝やさいの会」の五平餅と、運営スタッフ・大江さんの手作り料理の数々が並びました。素材の野菜はすべて、大江さんがご主人とともに営む「おかさげ農園」のもの。地元の麹を使うなど、バリエーションに富んだ優しいおかずたちを前に話も弾みます。デザートのシャーベットとコンポートの素材は、なんと茄子!種明かしには感嘆の声が上がりました。

 

地域で、社会で。小さな「循環する輪」をつくり出す営み

午後は講師の末近さんによる講義「小さな循環をつくり出す」が行われました。

末近さんは服飾専門学校を卒業後、東京で仲間とともにアパレルブランドを立ち上げ、多忙な日々を送っていました。しかし、東日本大震災を機に一旦業界を離れ、バックパックで世界中を旅します。そしてこの旅が、「てとてびと商店」の原点となりました。帰国した末近さんは、旅の中で出会ったパートナーとともに「土地に根ざしたものづくりの暮らし」を求め、八百津にたどり着くのです。

服づくりのなりわいを進めながら、住まいと店舗の改修をほぼ同時に手がけ、地域の人々に理解してもらうための取り組みも行い…と、夫婦で奮闘してきた末近さん。今はもう作られていない古い織機で織られた布を、地元で採取できる植物も使いながら染め、自らパターンを起こし、地域の縫い子さんに縫製を依頼。廃郵便局を改装したお店で服を売り、それが誰かの手に渡ったあとも、補修などのアフターケアによる繋がりが続きます。地域、そして服を愛用する人々との間での「循環する輪」をテーマに、「てとてびと」は3年目を迎えました。

末近さんは、移住生活となりわいについて、6つのポイントを挙げてくださいました。

1.その土地をリサーチする
末近さんは本当に何も知らずに八百津に来て、冬の厳しさや地域のお祭りなど行事の多さには驚いたと言います。実際に移ったらそれはそれで何とかなることも多いのですが、事前に知って心づもりをしておくに越したことはありません。今では土地・地域に根ざした生活を送っている末近さんですが、やはり実際に移住する前にその土地のことを知っておくのは大切だと話してくださいました。


2.「足りない」をチャンスに
都会なら難なく得られるリソースも、田舎ではなかなか手に入らないことが多くあります。移住して新たになりわいを立ち上げるなら、資金の面でも大変かもしれません。しかし、それらの不足を何とかする工夫が独自性に繋がります。「足りない」はチャンス!と捉える前向きさ、大切です。


3.あるものに目を向ける
2.と表裏一体ですが、「今、ここにあるもの」に注目し、活かしていくこと。それが強みや魅力、人を引きつけるストーリーとなっていきます。地域に存在するリソースを活用することは、地元の人々の活力や喜びにも繋がっていきます。

 

4.同じようなことをしている仲間を持つ
自営は孤独です。なりわいの場が田舎であったり、移住して仕事を立ち上げたりなどの場合は特にそう感じることも多くなるかもしれません。「あの人も頑張ってるんだ」と顔を思い浮かべられる存在がいれば、遠くにいても、なかなか会えなくても励ましになります。実際にコラボしたり何かを一緒にやったりするのでなくても、自分と同じような移住者・自営業主とゆるやかな繋がりを持つことは大きな助けになるでしょう。

 

5.社会は助けてくれる
末近さんご夫妻が八百津での起業に踏み切ったきっかけのひとつが、起業型地域おこし協力隊制度でした。ご主人が隊員に応募、採用され、町のサポートも得ながら夫婦でなりわいを一からつくり上げてきました。
また、事業者向けにさまざまな支援制度や補助金・助成金制度もあります。自分で詳しく調べたり、人にたまたま聞いたりしないと気づかないことも多いのですが、社会からの支援の手は、意外と差し伸べられているもの。それらの中から自分に合うものを適切なタイミングで活用することは、「いつかなりわいを通じて社会に還元できるようになろう」というモチベーションにも繋がるのではないでしょうか。

6.やりたいことはすぐには叶わない
情報が溢れる時代、WebやSNSでうまくいっている(いそうな)人々の様子は望まずともどんどん目に飛び込んできます。焦りを感じることもあると思いますが、情報に惑わされず、自分の信じた道を行きましょう。すぐにすべてが叶ってしまったら、きっとそんなに面白くないはず。「やりたいこと」への道程も楽しんでいきましょう。

末近さんは、「てとてびと」の品を実際にお持ちくださいました。凛とした佇まいながら、手の温かさを感じる服の数々。お話を伺ったあとに再び触れると、その1枚1枚に込められた想いや、八百津での生活の息吹がより深く感じられるような思いがしました。

 

「本当の意味でのサステナブルを感じた」受講生の気づき

末近さんによる講義のあとはシェアタイム。受講生・スタッフの気づきを一部ご紹介します。

●巷で盛んに叫ばれるSDGsではなく、末近さんの実践している「小さな循環」こそが本当のサステナブルだと感じた。

●東京でのお仕事を離れるまでの話が自分と重なった。仕事を頑張ることこそが自分のやりたいことだと思い込み、体調を崩して入院したことがある。入院で「何もしない」時間を得てやっと、自分を振り返り、何が幸せかを考えることができた。

●一方通行で流すだけではどこかで止まってしまう。「循環」させることが大切だと実感した。小さな輪を自分も作れるだろうか。

「幸せは安心の中にあるものだと思っていたが、違った。実際は、幸せと不安は隣り合わせ。『今月も子どもに食べさせられた』『家族一緒にご飯を食べられた』不安の中のそんなほっとできる一瞬こそが幸せだと思う」

たくさん共感した末近さんのお話の中でも、最も印象深かったのがこの言葉でした。深い実感を背景とした末近さんのお話から、田舎で暮らすこと、なりわいをつくることの厳しさと喜びを感じていただけたのではないかと思っています。

 

第3回は10月30日(日)に開催予定です。前半は、町内の「笠置山栗園」選果場の見学&栗園についてのお話を。後半は、岐阜県山県市から「柿BUSHI」代表の加藤慶さんをお招きし、「地域にある資源を最大限に活かす」をテーマに講義・ワークショップを行います。

単発受講・3回目からの連続受講も大歓迎です♪

興味を持っていただけたら、ぜひ以下のリンクから詳細をご覧ください。リンクからお申し込みも可能。お待ちしています!

◆2022えなローカル起業カレッジ