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移住者さんの暮らし

スタートアップ、中学校教員からキャンプ場の管理人へ:平林悠基さん

©︎ Guyichiro Yoneyama

中野方を見下ろす笠置山山頂近くにある「望郷の森キャンプ場」。約5年前に中野方に移住した平林悠基さんは、その管理人を務めています。

寂れ、忘れられていたこのキャンプ場を再生し、自然を愛する人々が集う場と変え、さらに大きなビジョンに向けて歩みを進めている平林さん。今回は、移住の経緯や現在のお仕事と生活、今感じる中野方の良さ、そして今後の展望について伺いました。

平林さんの運営する望郷の森キャンプ場について、詳しくは以下リンクをご覧ください。

◆「望郷の森キャンプ場」HP
◆平林さんが講師を務めた「2022えなローカル起業カレッジ」第2回レポート

(2022年12月取材)

 

「望郷の森」の可能性に惹かれて

©︎ Ryosuke.Someya

――中野方に来る前は、教員をされていたんですよね。

平林:はい。大学で教員免許を取りましたが、卒業後は広い世界を見たい、チャレンジしたいという想いで、東京のスタートアップで働いていました。その後、自分が何をするべきか?を考えたり、海外での出会いもあり、教育に関わる仕事をしていきたいと思うようになったんです。そんな折、僕は岩村(恵那市の南側)出身なのですが、地元である東濃の教育事務所から、急遽教員が必要な学校があるから来てくれないかと連絡をいただいて。これも何かのご縁と思い、中津川の公立中学校で教員となりました。

――望郷の森との関わりはいつから?

平林:教員時代、毎年夏休みの時期に望郷の森で小学生向けのサマーキャンプをやっていたんです。教員としてではなく、あくまで個人の企画として、東京で知り合うことのできた面白い仲間と一緒に。地域の食材を使わせてもらったり、運営を手伝ってもらったりと、地元の方にもいろいろと協力していただいていました。

サマーキャンプの映像

――それで、中野方とのつながりができたのですね。

平林:そうですね。教員の仕事はすごく充実していてやりがいもあったのですが、このサマーキャンプの成果も出てきていたこともあって、学校の外で子どものための機会を作っていく役割の方が自分に求められているのではという思いがありました。そんな中で、望郷の森の管理人がなかなか見つからないという話を伺って。実は、新たな自分のフィールドとして他の地域も検討していたこともありました。しかし、標高1,000mという立地やクライミングの聖地であること、これまでに築いた地域の方々とのつながりなどやはり望郷の森の魅力と可能性は大きいと感じ、教員を辞めて運営を担うことにしたのです。

 

地域の人々に支えられて、ここまできた

平林さん宅で開かれた「なかのほうフライデーナイト」

――現在のお家は、どのように見つけたのですか?

平林:地元が市内の岩村なので通えない距離じゃないんですけど、地域の方にいろいろ協力してもらいながら仕事をすることになるので、やはり中野方に住む方がいいかなと。そこで、町内の空き家を紹介していただいて、リノベーションして住んでいます。

――「なかのほうフライデーナイト」(移住者・Uターン者の集まり)でお伺いしたとき、すごくお洒落でいいなぁと。改修はご自身で?

平林:デザインは建築家に相談をして、施工は自分でやりつつ、多くの仲間も協力してくれました。難しい所は地元の大工さんにお願いして。自分が住む家も、人が集まれたり、民泊で貸せたりするような、楽しい場所にしていきたいと考えていました。今の家の大家さんは外から来る人や若い人を受け入れることにとても前向きで、最初から大変良くしていただき、ずっと心強い理解者であり続けてくださっています。

――望郷の森は、平林さんの個人的なつながりとともに地域の方々の協力や関わりも多くあって、本当に「みんなで作ったキャンプ場」という印象があります。地域には、自分からどんどん働きかけていった感じなのでしょうか?

平林:はい、中野方町は振興会長さんはじめ、新しいチャレンジをみんなで応援して行こうという地域だと思います。何度も話を聞いていただいたり、無理なお願いでも受け止めていただいています。望郷の森は地域と関係の深い場所なので、その運営を担うには、地域との関わりが大切です。町や行政のいろんな方に相談したり打ち合わせしたりする機会は必然的に数多くありますから、次第に接点がたくさんできていきます。アグレッシブに自分から動いたというよりは、自然とそうなっていって。自分のやりたいことや想いを地道に伝えていくことで、共感し、協力してくださる方が少しずつ増えていき、活動させていただいています。

 

もっともっと、家族と子どもが楽しめるキャンプ場へ

――今の時期、キャンプ場はクローズしていますよね(12月〜4月頃まで冬季休業)。冬はどのように過ごしていますか?

平林:冬の間はキャンプ場の整備やイベントなどの年間計画を立てたり、補助金申請の書類を作ったりなど、次のシーズンに向けた準備をしています。並行してリモートでできるIT関連の仕事もしています。

――それも、複業・多業のひとつの形ですね。4月頃からは新たなシーズンが始まりますが、今後取り組んでいきたいことは?

平林:今シーズンは、地域の皆さんにすごく応援していただいて、キャンプ場の整備がどんどん進んだ1年でした。新しいシャワールームやトイレを作ったり、サイトを増設したり、高速Wi-Fiの導入などをしてきて、やっと環境が整ってきたという実感があります。ただ、まだまだ初心者には厳しい場所、玄人向けという印象が強いのか、ソロキャンパーの方が多いのが現状なんですね。来シーズンは名古屋など愛知県方面向けにPRをして、家族連れの方や初心者キャンパーの方が楽しんでいただけるようなプランやサービスに注力していこうと考えています。

――今シーズンはキャンプ場としてのハードが整った、ある意味節目のシーズンでもあったんですね。

平林:そうですね。快適に過ごせる環境整備が一段落したので、もともと志していた「教育」、これは遊びや楽しむことも含めた全方位的な意味ですが、ここにもっと力を入れていきたいと思っています。自然の中で子どもと楽しみたいけれど、キャンプはちょっとハードルが高いと感じているようなファミリー層を、もっと呼び込んでいきたいですね。「ここに来たら目いっぱい遊べて、成長できる」というコンセプトをしっかりと打ち出して、多くの中から選んでもらえるキャンプ場にしていきたいと思っています。仲間もたくさん増やして運営していきたいので、望郷の森で働くことに興味のある方は連絡してほしいと思います。

 

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幼児の母&キャンプ初心者の取材者が「5、6歳の子でも望郷の森は楽しめますか?」と聞くと、「もちろん!」との返事が。焼きマシュマロや岩登り、ちょっとドキドキのナイトハイクなど、子ども向けにさまざまな提案をしてくれるそうです。

核家族や一人っ子も多い今、他の子どもたちや親以外の大人と楽しむ機会は貴重です。これから、望郷の森は多くの家族や子どもたちの大切な場となっていくのではと感じた取材でした。