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移住者さんの暮らし

地域・自然と当たり前につながる暮らし:浅谷真二郎さん・満実子さん

浅谷さんご一家は真二郎さん、妻の満実子さん、長女(小6)、長男(小4)、次女(小1)の5人家族。14年ほど前に中野方に移住し、田舎ならではの生活を楽しんでいます。

今回は真二郎さん・満実子さんご夫妻に、移住の経緯と移住後の生活について伺いました。中野方っぽい?エピソードの数々や、豊かな自然の中での楽しみなど、たくさんお聞きすることができました。

(2023年1月取材)

中野方の景色に原風景を見出し、ログハウス購入へ

現在、薪ストーブのあるログハウスにお住まいの浅谷さんご一家。売りに出されていたこの家を新聞折込で見つけた当時、真二郎さんは県内の御嵩町で一人暮らしをしていました。ちょうど転勤で恵那勤務となった真二郎さんは、実際にこの家を下見に訪れます。恵那のお隣・瑞浪出身で子ども時代は野山を駆け回って育った真二郎さんは、中野方の景色にご自身の原風景を見出したと言います。

「とても眺めが良くて、心地のいい場所。目の前に田んぼ、近くに川、少し歩けば山。子どもの頃過ごした環境にとても近いなと思って」

こうして、真二郎さんの中野方での暮らしがスタートしました。当初は一人暮らしでしたが、以前からの知り合いだった満実子さんと結婚。現在は5人家族の浅谷家は、自然と地域の中で賑やかに暮らしています。

中野方のいいところは、第一に自然に恵まれた環境の良さと話す真二郎さん。また、アクセスの良さも魅力だといいます。中央道の恵那インターまで車で25分ほど(信号は3つのみ!)でどこにでも出かけやすく、電車なら同じく30分ほどの恵那駅まで行けば名古屋まで中央本線1本で出られます。「田舎のわりにアクセスのいい場所」であることは、家を購入する際のひとつの決め手となりました。

現在、真二郎さんは移住前からと同じ勤務先で仕事を続けています。満実子さんは当初は移住前と同じ愛知県の職場に通勤していましたが、その後町内の「不動滝やさいの会」で仕事をするように。現在は「NPO法人恵那市坂折棚田保存会」を中心に「気づいたらいろいろやってる」、町の人々から頼りにされる存在となっています。

 

あるある?びっくり?中野方エピソード

さらに、「地域の人の親切さ」も中野方の大きな魅力だとお二人は言います。さまざまなエピソードをお聞かせいただいた中から、一部をご紹介します。同じ移住者として「うんうん、わかる!」というものから、ちょっと笑ってしまうものまで。中野方の良さを感じていただけたら嬉しいです。

家を買う前のこと。仕事で関わりのあった地域の方々に「どんな家なの?」と聞いたら、「誰々さんの息子が結婚して建ててそれから〇〇…」など、いろんな方がそれは事細かに話してくれた。

●うちに遊びに来ようとした人が車で道に迷っていたら、「どうしたんや?」と軽トラからおじいちゃんが声をかけてきて道を教えてくれた。

●小学校が集団登校でないことに最初はびっくり。「バラバラで大丈夫なの?」と思ったが、地域の目がばっちりあるので全然問題ないことに気づく。

●うちの車のルームライトが点きっぱなしだったのをある方が発見。そこから班長さんなどいろんな人を経由して、うちの車は死角で見えないはずの向かいのお宅から「ライト点いてるよ」と教えてもらった。経緯を聞いてネットワークに感嘆。

あと、災害時には中野方はきっと強い、とお二人は話していました。お米は倉庫に、野菜は畑に、何なら食べられる野草も生えている。水もある。そして味噌は、自分の家の1年分だけではなく、何かあった時に隣近所や親戚に分けられるようにと考えて、2年分ほどをストックしているお宅もあると言います。外からの助けがなくとも、地域内でしばらくは食いつなぐことができるのです。

「誰々さんが発電機持っとるわ、きれいな山水ははあそこに湧いとるわって。炊き出しもやろうと思えばみんなでできる。まさに、こちらの方言で言うところの『おきもり』、いい意味での助け合い意識がありますよね」

 

ここで育てば、自然と生きる力が身についていく

浅谷さんのお子さんは、3人とも中野方生まれ。物心ついた頃からずっと自然の中で遊び、暮らしてきました。

「子どもがのびのびと、縮こまらずに育つのがいちばんいいよね。田舎の最大のメリットじゃないかな。こういう環境なので、『放し飼い』が一番。子どもは年齢関係なく、子ども同士で遊ぶのが一番。お互い刺激になるし」

お家の目の前の田んぼは、子どもたちの格好の遊び場でもあります。満実子さんが「ほぼビオトープ。お米作っているとは思われていないかも…」と話すように、無肥料・無農薬の田んぼは生き物の宝庫。ミズカマキリやコオイムシ、ヤマアカガエル、アカハライモリ…秋にはカヤネズミが巣を作っていることもあるとか。「ほぼ植えっぱなし」と満実子さんは笑いますが、田植えや稲刈りなど、米作りの一連の作業も家族や友人たちと賑やかに行っています。

そんな環境で育った子どもたちの中でも、特に長男は「生まれながらのハンター」。いつも野山を駆け回り、夏休みは毎日のように中野方川に釣りへ。釣ったものはちゃんと自分で捌いておいしく食べます。真二郎さんの趣味である狩猟にも一緒に行き、今では蛇の皮も剥けるし、獲った鳥の処理も任せられるほどだそうです。

「都会だと、こうした体験はわざわざ田舎に出向かないとできません。しかも一時的にだけ。でも、ここでは自然の中での遊びも経験も当たり前。子どもたちには、ここで育つ中で本当の意味での生活力や生き抜く力をつけてほしいと思っています」

 

狩猟を通して見えてきた、第二の人生

真二郎さんが目下夢中になっているのは狩猟。狩猟免許を取得し、現在は休日に空気銃を使った猟に取り組んでいます。

「何もない山の中を歩くと本当にしーんとしている。でも、ぴたっと止まって5分か10分くらい経つと、それはもうおびただしい数の鳥から何からが一気に動き出す。じーっとしていると、名前もわからない小鳥が目の前に飛んできたり、リスがちょろちょろしたり。ざわざわと生き物の音に満ちている、この状態が本来の山なんだなと」

それを体感できる狩猟は、究極のアウトドアスポーツではないかと真二郎さんは話します。

現在、農作物の獣害対策として、またジビエが注目されつつあることから、狩猟が少しずつ脚光を浴び始めていると感じます。しかし、実は捕獲された野生鳥獣のうち流通に回るのは1割ほどで、残りはわずかな自家消費分を除くと埋設・焼却処理されてしまっているのだそうです。

「せっかく自然の中で育った肉を捨ててしまうのはどうかなと…。『ジビエコーナー』が普通にスーパーにあるくらいの世の中になったらいいなと思います。フレンチのシェフが作るかっこいいジビエ料理じゃなくて、餃子とか生姜焼きとか、家庭料理に普通に登場するようになってほしい」

現在のお仕事の定年が視野に入ってきたという真二郎さんは、狩猟の経験を積みつつ、今後はジビエの普及のために何かできればと話していました。

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薪ストーブの暖かさの中、ご夫婦の掛け合いが楽しい、笑いの絶えない取材でした。

移住歴のまだ浅い取材者は、正直なところ都会時代の忙しい生活スタイルからなかなか抜け出せないでいたります。しかし、今回のお話からは自然とともに暮らす楽しさを改めて感じることができました。